スピーカーケーブルに音の焦点はあるのか

なぜか音の焦点は人気があるようなので、

考察してみます。

 

まず、考察の対象は手持ちのBelden 8470 5mです。

このケーブルの仕様は、

導体芯線: ETP高導電率錫メッキ銅撚線, 16AWG, 1.31SQ

なので、

導体構成表

よりAWG 16のすずめっき線の最大電気抵抗は、

14.1 Ohm/kmなので5mでは、

R=70.5 mOhmとなります。

 

また、手持ちのLCメーターで実測すると、

L=0.003 mH

C=4.19 uF

となります。

 

ケーブルの長さを切って音の焦点を調整していることから、

LR LPFのRを調整しているモデルとすると、

LRローパス・フィルタ数計算ツールより、

fc=3.74kHzを得ます。

 

つまり、可聴帯域のローパス・フィルターを調整しているので、

音の変化として知覚できます。

 

したがって、音の焦点は存在します。

 

 

 

スピーカーユニットの最適設計

分割振動などスピーカーユニットの最適設計に関する情報をまとめておきます。

 

空気の粘性減衰がコーンスピーカの振動と音響特性に及ぼす影響に関する研究

スピーカ計測・評価技術 / 第2回 スピーカの表面振動と音の伝播

平面スピーカ

振動板の形状の影響に関する図を引用しておきます。

これらを踏まえると、

通常のマルチウェイの設計では、

振動板の素材と形状でほぼ決まる、

周波数特性の平坦な領域を見て、

クロスオーバー周波数と遮断特性を

選択することになります。

 

例えば、

ツイーターをソフトドーム(BC25SC55-04)、

ウーファーをハードドーム(GBS-135F25AL02-04)、

にして、2kHz 12db/Oct(2k-HPF-4, 2k-LPF-4)

でクロスするような感じです。

 

ケーブルの最適設計

ケーブルの最適設計に関連するサイトをまとめておきます。

 

オーディオケーブルで最も重要なのは導体の線径。

なぜリッツ線?

リッツ線の表皮効果という誤解

 

その他メッキや被覆素材などの影響もありますが、

最終的には、

設計目標や制約条件に応じたトレードオフに基づいて、

ケーブルを選択する必要があります。

 

音質を決めているのは、

ケーブルを構成している素材の物性や

幾何学的配置などの物理設計による

周波数特性や過渡特性であって、

価格ではありません。

 

もちろん、設計モデルに組み込まれていない

パラメータの影響は別途評価する必要はあります。

 

MK442T 4″ 2-Way Transmission Line Tower Speaker Pair

Parts Expressのカタログを眺めていたら、

MK442T 4″ 2-Way Transmission Line Tower Speaker Pair

に目がとまりました。

 

10cmのウーファー2発に19mmのツイーターがついた

トランスミッションラインのタワースピーカーが

$239.95となっています。

 

Audioholicsのレビュー記事はこちらです。

Dayton Audio MK442T Transmission Line Tower Speaker Review

 

日本に送ってもらうと、

送料と関税で2倍くらいの費用になりますが、

それでも破格には変わりないと思います。

 

自作の方が高くついてしまいますね。

 

Teac S-300の改造

30年ほど使っているTeac S-300を改造してみました。

まず、吸音材、端子台、ネットワーク、ケーブルを交換します。

 

オリジナルは、

200x190x30mmのウール状の吸音材、

簡単なねじ式の端子台、

電解コンデンサ(3.3uF 50V BP)とフェライトコアのコイル(0.4mH)による

4.4kH HPF 12dB/Octネットワーク、

AWG 22相当の細いケーブル(0.205 inchおよび0.110 inch Faston)

で構成されています。

 

これらを、以下のような部品に交換します。

Bi-Amp Speaker Terminal Cup Satin Nickel Binding Post Banana Jack

Dayton Audio 4k-HPF-8 High Pass Speaker Crossover 4,000 Hz 12 dB/Octave

Dayton Audio 4k-LPF-8 Low Pass Speaker Crossover 4,000 Hz 12 dB/Octave

VFF0.75 205ファストン付ケーブル30cm

110ファストン端子

エプトシーラー EE-1010

 

端子台を大きなものに変えるため、

エンクロージャ背板の取り付け穴を広げる必要がありますが、

15mm厚のパーチクルボードで非常にもろいので

注意が必要です。

 

部品交換後の様子はこちらです。

吸音材は、天板とユニット下側の

リアバスレフポートの入り口を囲む3面に

貼っています。

 

次に、異音の原因になっている、

経年変化でぼろぼろになった、

ウーファーとツイーターの間の

ウレタンを除去しました。

ツイーターのマグネットの磁界が強力なので、

竹やプラスチックなどの道具で除去しないと危険です。

 

これらの作業の結果、

オリジナルよりも高域の透明感と低域の明瞭感が増して、

全体的にワイドレンジに感じるようになりました。

 

トランスミッションラインの最適設計

PMCのATLのカットモデルやスペックを見ていて、

気がついたことがあります。

twenty5.26iのエンクロージャー、高さは1.04mで、

カットモデルを見る限り、

ドライバ側とポート側の仕切り板を閉端と見なした場合の

トランスミッションラインの物理的な長さは、

約2.08mとなります。

ところが、スペックの有効ATL長さ(Effective ATL Length)は、

およそ1.5倍(高さの3倍)の3.3mとなっています。

これは、どういうことかと推測すると、

ドライバを閉端、ポートを開端とする直管と見なした場合の

有効長ということのようです。

思考実験としては、以下のような手順になります。

  1.  ドライバの位置をドライバ側の仕切り板の鏡像位置に展開する。
  2.  さらに、天板の鏡像位置に展開する。
  3. ポートの位置を仕切り板の鏡像位置に展開する。
  4. さらに、底版の鏡像位置に展開する。

この手順に基づいて、

曲がりを無視した1次元モデルで計算すると、

エンクロージャーの高さをhとした場合、

3hになることがわかります。

さらに、この設計モデルでは、

仕切り板と天板および底版の位置関係で、

定在波を比例分割できるため、

およそ1:2の位置にすると、

3, 5, 7倍の波長をアラインできるようです。

さらに、PMCの他のカットモデルの例をあげておきます。

ドライバだけオフセットしているモデル

ドライバとポートをオフセットして吸音材で長さを調整しているモデル

これは、試作して検証してみる価値がありそうです。

VituixCADによるバスレフ・エンクロージャーのAuto Align

VituixCADEnclosure Tool のAuto Alignによる

バスレフ・エンクロージャーの設計例をまとめておきます。

また、こちらのリンクが参考になります。

VituixCADマニュアル~とりあえず動くからヨシ!~

Electroacoustic modelling of thesubwoofer enclosures

 

まず、Driverとして、CHR70v3を追加します。

また、Ql=3, Qa=100, Qp=100, Vent Diam=3.5cmとしています。

 

最初に、SC4(4次チェビシェフ)のAuto Alignです。

Box: Volume=27.6l, Fb=50.1Hz

Vent: Length=1.6cmとなりました。

60Hzまでほぼフラットで45Hz, -3dBまで、

群遅延が16msです。

比較的大きなエンクロージャーで、

板厚だけのポートで良さそうです。

 

つぎに、SBB4(4次バタワース)のAuto Alignです。

Box: Volume: 9.3l, Fb=65.4Hz

Vent: Length=4.6cmとなりました。

100Hzで+2dBほど盛り上がって50Hz, -3dBまで、

群遅延は9ms程度で、

インピーダンスのピークがそろっています。

 

最後に、試作したNC7ベースのエンクロージャーの設計例です。

Box: Volume: 8.82l, Fb=50.4Hz

Vent: Length=10.3cmとしました。

130Hzで+1dBほど盛り上がって、50Hz, -3dBまで、

群遅延は12.5msです。

 

バスレフ・エンクロージャーの設計理論

WikibooksでAcoustics/Bass-Reflex Enclosure Desginを見つけたので、

要点をまとめておきます。

ポート付エンクロージャーの周波数応答への影響

図2:集中定数回路によるバスレフ・エンクロージャ音響回路のモデル

図3:ラウドスピーカーの振動板およびボイスコイルから見たインピーダンス

ポート付きエンクロージャーの定量解析

ボイスコイルのインピーダンスと放射インピーダンスの単純化による

低周波数(1kHz未満)での集中定数回路モデルの導出

図4:低周波数での等価音響回路

モデルを理解しやすくするための、パラメータの導入

ヘルムホルツ共鳴比(h=ωb/ωs)

容積比(α=Vas/Vab)

クオリティ・ファクター(Ql, Qts)

低周波圧力応答式の展開

体積速度と球面音源の式から

ファー・フィールドの圧力式を展開して伝達関数(H(s)を得る。

アラインメント

伝達関数の理想パラメータを決定するために、

フィルター理論のアラインメントを導入する。

伝達関数は4次ハイパスフィルターの構造をもち、

バタワースやチェビシェフフィルターなどの

伝統的なLPFの極配置アルゴリズムが適用できる。

バタワース・アラインメント

通過帯域の最大平坦化を目的とするアルゴリズム(B4)

準バタワース・アラインメント

3次準バタワースアラインメント(QB3(B>0))と

4次バタワースアラインメント(B4(B=0)の関係

図5:3次準バタワース周波数応答(0.1<=B<=3)

チェビシェフ・アラインメント

通過帯域にリップルを許容するアルゴリズム。

図6:チェビシェフ(0.5dBリップル)とバタワースのハイパス応答の比較

適切なアラインメントの選択

バタワース・アラインメントは、

Ql, Qts, h, αのうち1つを決定すれば、他の3つは一意に決定できる。

準バタワース・アラインメントは、

Qtsが小さくバタワースを構成できないときに、パラメータBを導入して決定できる。

チェビシェフ・アラインメントは、

Qtsが大きくバタワースを構成できないときや、さらに低域応答を広げたい場合に利用できる。

参考文献

等価回路パラメータの計算式

エンクロージャ・パラメータの公式

 

バスレフの吸音材の貼り方

バスレフの吸音材の貼り方に関する考察をまとめておきます。

 

設計例として、FF105WKのデータシートに載っている、

バスレフエンクロージャー(6L, 128x192x264mm)を引用します。

 

まず、吸音材を貼る目的は、定在波の低減です。

直方体のエンクロージャー内部で発生する定在波の周波数(kHz)は、

音速(340m/s)を面間、辺間、頂点間それぞれの距離(mm)で割れば求まります。

計算結果を表にしておきます。

幾何学的には、2.66kHzから0.97kHzの定在波が発生することがわかります。

これらの定在波をすべて低減するためには、

少なくとも平行でない3つの面に吸音材を貼ることが必要です。

また、吸音すべき周波数帯域は、通常、

400Hz以上のバスレフ共振に不要な帯域です。

 

バスレフの場合、エンクロージャーの容積が共振周波数に影響するため、

ニードルフェルトなど面に貼るタイプの吸音材はできるだけ薄いものが理想的です。

 

また、バスレフポートの開放端付近では、

空気の流れを阻害しないことが必要です。

 

したがって、グラスウールなど空間に充填するタイプの吸音材は、

位置を固定しづらく、

エンクロージャーの容積の減少に寄与する実質体積を定量的に把握するのが困難で、

詰めすぎると共振に必要な低域のエネルギーも吸収してしまうため、

バスレフには不向きと考えます。

 

WP-FL10のTSパラメータとバスレフでの周波数特性

WP-FL10のバスレフにおける設計をまとめておきます。

WP-FL10のデータシートに載っている情報は、

TSパラメータの一部と周波数特性のグラフだけです。

まず、spedで必要なTSパラメータを導出します。

Re(Rdc)は、WP-FL10の実測値(7 Ohm)です。

Blは、周波数特性のグラフが88dB程度になる値(3 Tm)としています。

Leは、FF105WKの値(0.041 mH)を参考にしています。

他のTSパラメータは、TSパラメータについてを参考に計算すると、

このようになります。

次に、エンクロージャーですが、

FF105WKのデータシートを参考にしたものが入手しやすいようです。

spedでのシミュレーションの様子です。

最後に、バスレフ方式の設計法を参考に、

エンクロージャー容量とダクトの共振周波数の関係を

評価((Fd/Fs)^2/(Vas/Vo))=1が目標値)します。

0.95となって、おおむね良さそうです。

 

実際に試作して音を確認してみると、

100Hz付近に盛り上がりがありますが、

自然な感じの低域になっています。

m0(Mms)が2.5gと軽く、

f0(Fs)が61Hzと低いため、

ユニットのインピーダンス曲線のQが広くなっているのが

効いているようです。