D級GaN MOSFETアンプの試作

D級GaN MOSFETアンプの試作を行いました。

ヒートシンクにマウントしたPCBがこちらです。

アルミケースに入れて、

理想ダイオード電源でテストしています。

左側はSiC MOSFETアンプ、

右側がGaN MOSFETアンプです。

気になる音の方は、これがGaNの音かといった感じで、

低音から高音まで音源がそのまま音になる感じです。

 

IR2110と出力段の電解コンデンサがやや熱を持ちますが、

スイッチング周波数と電力を考えれば、

問題ない程度です。

 

電源オフ時に軽いポップノイズがでますが、

対策が必要な程ではありません。

 

残りの課題は、

自励発振が音量を上げないと始まらない点だけです。

 

ツェナーダイオードとトランジスタによるレギュレータ回路

電源レールの電圧が35V以上になると、

3端子レギュレータの入力電圧の定格を越えてしまうため

ディスクリートによるレギュレータ回路が必要になります。

 

ここでは、最もよく用いられる回路として、

ツェナーダイオードを基準電圧とした

トランジスタによるレギュレータ回路を検討します。

なお、トランジスタとして2N5551, 2N5401, 2SC3851, 2SD2014を想定しています。

 

+-45Vの電源レールに対する+-5V, +12V(-45V基準)のレギュレータ回路はこちら。

+-45Vの電源レールにそれぞれ1V, 100Hzの正弦波をリップルとして加えて、

LEDを負荷としてシミュレートした過渡応答がこちら。

 

設計のポイントは、まず、

ツェナーダイオード(6.2V, 15V)の電圧と電流を決定する必要があります。

降伏電圧とツェナー電流、最大損失を考慮しますが、

ここでは、ツェナー電流を5mA程度とするように、

分圧抵抗(2.2kΩ, 3.3kΩ, 4.7kΩ)を選んでいます。

 

コンデンサは分圧抵抗とCRフィルタを構成して、

ツェナー電圧のノイズをフィルタリングしています。

10uF, 4.7kΩでカットオフ周波数が3.4Hzとなります。

 

シャント抵抗(100Ω, 15Ω) は突入電流(600mAまたは4A程度)が

トランジスタのSOAに収まる値を選んでいます。

 

リップルに対する応答はhfeに依存するようで、

ダーリントンが最も大きくなっていますが、

大電流出力とのトレードオフとなります。

 

負荷に対する電圧降下も大きいですが、

非常に素直な過渡応答特性なので、

これ以上のレギュレーションが必要な場合は、

3端子レギュレータをカスケードすればよいでしょう。

 

D級GaN MOSFETアンプの保護回路

D級GaN MOSFETアンプの保護回路として

正側電源レールのOVP, 負側電源レールのUVP, アンプ出力のDCPを設計しました。

LT SPICEの回路図はこちら。

過渡応答はこちら。

 

コンパレータにLM339, IR2110のシャットダウン(SD)入力のドライバとしてCD4069UBを使います。

コンパレータの基準電圧は1n4148の順方向降下電圧(Vf)で,

電源レール(+-24V)のOVP,UVPは24V Zenerの超過電圧を抵抗分圧しています。

DCPはCRによるLPFを抵抗分圧して、

正負両側を2つのコンパレータで見ています。

OVP, UVP, DCP, 合計4つのコンパレータ出力(+-5VのオープンコレクタActive Low出力)をWired-ORして、

レベルシフト(-24Vのグランド変換と+-5Vから12Vへのレベル変換)後、

CD4069UBで、ディレイをかけた後、LEDとIR2011のSD端子を駆動しています。

 

 

 

IR2110によるD級GaN MOSFETアンプの設計

IR(Infenion)のハイ・アンド・ローサイド・ドライバIR2110

D級GaN MOSFETアンプの設計をしてみました。

 

LT Spiceでの回路図はこちらです。

1V, 20KHz正弦波の入力に対する過渡応答はこちらです。

 

設計のポイントとしては、

レベルシフト回路、

デッドタイム回路、

ブートストラップ回路、

積分器の定数、

を上げておきます。

 

レベルシフト回路は、LT1016のデータシートを参照して下さい。

-24Vのグランド変換と5Vから12Vのレベルシフトを行っています。

 

デッドタイム回路はCRD回路で85nsのデットタイムを生成しています。

 

ブートストラップ回路は、Fairchild(ON Semi)のアプリケーションノートを参照して下さい。

ローサイドのバイパスコンデンサにも抵抗を入れているのは、
ハイサイドとローサイドのゲート駆動電圧をできるだけ揃えるためです。
積分器の定数は、LT1363の出力範囲の中で三角波(鋸波)が移動するように、
決めます。
ブレッドボードで動作を確認したところ、
自励発振周波数(搬送波周波数)が1.2-0.95MHz程度(温度によって変動する)となりました。
SPICEシミュレーションの結果とよく一致しています。
 
ソースタブから出力をとり、
ソースピンはゲートドライバ(IR2110)のVsとCOMにつなぐケルビン接続としています。