オーディオパワーアンプ用MOSFETの選択

オーディオパワーアンプにMOSFETを用いる場合、

熱安定性を考慮するとバイアスは1A前後がかけられるSOAと

PD 100W程度、Vds 100V, ZTCが6A程度のものが扱いやすいのですが、

SiC MOSFETやUHC MOSFETの中から見つけるのは大変です。

 

ここでは、Rohm SCT2450KEFarichild FQH44N10をあげておきます。

それぞれ、バイアスはSCT2450KEで800mA、FQH44N10で1.33Aで良さそうです。

 

SCT2450KEは、入力容量(Ciss)が463pFと低めですが、

トランスコンダクタンス(gfs)が1Sしかないため、

歪率はTHD20 = 0.02%程度になりそうです。

 

FQH44N10は、Ciss = 1800pFと大きめですが、

gfs = 31Sと非常に大きいため、

歪率はTHD20 = 0.008%程度になりそうです。

 

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GaN MOSFETアンプの試作

現時点でのGaN MOSFETアンプのSPICEモデルの回路図、周波数応答、20kHzの正弦波応答を載せておきます。

THD20は0.000658%となっています。

電流検出抵抗の温度係数が+-30ppm(0.0030%)程度なので、

十分、低歪だと思います。

問題は、熱安定性だけです。

 

GaN MOSFETアンプの温度安定性

GaN MOSFETアンプのテストをしていると、時々ものすごいノイズが発生します。

また、起動時に熱暴走してGaN MOSFETがショートしてしまうこともあります。

以下、参考になるアプリケーションノートを上げておきます。

AN-4161: Practical Considerations of Trench MOSFET Stability when Operating in Linear Mode

AB級アンプは線形領域で動作するため、最大損失とSOAの範囲で可能な限り、
ZTCよりも大きなゲート電圧とドレイン電流で動作させたいのですが、
TPH3205WSBのZTCは3V, 20A程度となっているため、
オーディオパワーアンプでは、現実的な値ではありません。
そこで、LT1166でバイアスを動的に制御しているのでZTCよりも小さい領域で動作はしますが、
Vdsが45Vなので, バイアス電流(Ids)が1.5AでTc=80℃のSOAのDCラインに引っかかります。
バイアス電流が1.33AでPDは60W, Tcaseは80℃程度なので、
電流集中による熱暴走を完全に抑えることは難しいようです。
また、寄生インダクタンスや寄生容量によるゲート電圧の外乱を出来るだけ排除することが必要です。

ドライバ回路の入力容量に対する最適化

LT1166のデータシートから引用します。

100Wオーディオ・パワー・アンプ

U3の役割は、M1とM2のゲートをドライブ
することです。このアンプの実際の出力は、一見したと
ころ考えられる点Cではなく電源ピンです。R6を流れる
電流を使用して電源電流を変調し、VTOPおよび
VBOTTOMをドライブします。U3の出力インピーダンス
(電源ピンを通した)は非常に高いため、20kHzでの歪み
を非常に低く抑えるのに必要な速度と精度でM1および
M2の容量性入力をドライブすることはできません。U2
の目的は、低出力インピーダンスを通して、M1および
M2のゲート容量をドライブし、M1およびM2の相互コ
ンダクタンスの非直線性を低減することです。R24とC4
は、U2がU3とU4を管理しなくなるが、利得が1になる
と自身を管理するような周波数よりも高い周波数を設定
します。R1/R2とC2/C3はCMRRフィードスルーに対す
る補償部品です。

シャント・レギュレータのドライブ


入力相互コンダクタンス段をドライブせずに、シャン
ト・レギュレータを直接電流ドライブすることができま
す。この方法には速度が向上する利点があり、gm段を
補償する必要がなくなります。ピン2をフロートさせる
と、LT1166を帰還ループの内側に置き、バイアス電流
源を通してドライブすることができます。入力相互コン
ダクタンス段はバイアスされたままで、回路動作に影響
を与えることはありません。図7のRLを使用すれば、入
力信号でオペアンプの電源電流を変調することができま
す。このオペアンプは、電源リードを電流源出力とする
V/Iコンバータとして機能します。負荷抵抗とオペアン
プの正入力は、LT1166の出力に接続され、AV=1V/Vと
するために帰還されます。コンデンサCFはITOPと
IBOTTOM間の不整合による出力VOSをなくし、DCにポー
ルを形成し、1/RFCFにゼロを形成します。MOSFETの位
相がループの安定性を低下させる前に、オペアンプの利
得が-1V/Vとなるようにゼロ周波数を選択します。

これらの内、C2/C3はM1およびM2の入力容量に関連しているようです。

また、R5/C5はシャント・レギュレータのドライブのRF/CFに相当しますが、

これもM1およびM2の入力容量に起因するピークを抑えることに関連しているようです。

TPH3205WSBの入力容量(Ciss)は2200pFなので、

C2/C3 = 2200pF/2200pF

R5/C5 = 4.7k/4700pF

にするとよいようです。

 

アモビーズによる磁気スナバ回路

Application Note 009: Recommended External Circuitry for Transphorm GaN FETs

によると、ゲートにフェライトビーズ、

ドレインもしくはソースにフェライトビーズもしくはRCスナバを推奨しています。

 

オーディオパワーアンプでは、ゲートにフェライトビーズは通常使わず、

100Ω程度のゲートストッパーで対応します。

また、ゲートゾーベルとしてRCスナバを実装してみましたが、時定数が限界になるようです。

そこで、フェライトビーズの代わりに、アモビーズをドレインとソースに追加したところ、

ボディダイオードのリカバリ特性に起因するノイズを効果的に抑制できるようです。

アモビーズの選び方を引用しておきます。

「アモビーズ」のコアサイズは、必要な電圧時間積(=磁束量)を計算することにより選定されます。
「アモビーズ」はその動作原理から、ダイオードのリバースリカバリの期間。「アモビーズ」に印加さ
れる電圧を負担する必要があります。この電圧と時間の積(電圧時間積)はコアの動作磁束量と等しくな
ります。従って「アモビーズ」に印加される電圧 Ec[V]とダイオードの逆回復時間 trr [sec] からノイズ抑
制に必要な磁束量Δφnsを求めます。
Δφns [Wb] =Ec×trr[V×Sec]
このとき「アモビーズ」に印加される電圧Ecは、ダイオードに印加される電圧で近似すると良い結果が
得られます。
ここで計算された電圧時間積Δφnsより大きなコア磁束φcを持つ「アモビーズ」を選択してください。
ただし、実際の回路における「アモビーズ」のノイズ抑制効果は、ダイオードの固有のリカバリ特性や
回路構成によって差が生じますので、必ず実験によってその効果を確認して下さい。
また、「アモビーズ」はCRスナバなどの影響が無い状態での評価をお願いします。

 

TPH3205WSBのデータシートによると、

VSD(Reverse voltage) = 2.4 V

trr(Reverse recovery time) = 30 ns

なので、

2.4 x 30 n = 720n = 0.72u < 0.9u Wb

となって、AB3X3x3WかAB3X3x3DYで、十分なようです。